居場所と出番

7月のオンラインでのアドラー英語読書会は、

Eva Dreikurs『Adlerian Theory :An Introduction 』(対訳版『エヴァ・ドライカース『アドラー心理学へのいざない』大竹優子・河内博子訳)の73~74ページを読んでいった。

さまざまな世代さまざまな経歴の彼ら/彼女らと、経験や意見を共有し合って楽しく学んでいる。

 

今回の英語読書会では、早期回想について学んだ。

早期回想とは、子ども時代のある日ある時の、感情をともなって(陽性感情でも陰性感情でも)、映画のワンシーンのようにありありと思い出す出来事のことだ。

今回は、以下の辺りに関してあれこれディスカッションした。

Early Recollectioms form a projective technique in Adlerian psychology. Adlerian assume that the person chooses to recall those events from chaildhood which fortify his basic goal and convictions about himself and the world. In other words, the person recalls events clearly and sharply as a  means of giving justification to his basic goal and beliefs, as a means of maintaining his Life Style.(早期回想はアドラー心理学における投影法です。人は基本的な目標とか自分自身や世界についての信念を強固なものにするような子ども時代の出来事を思い出すことを選ぶのだ、とアドラー派は考えています。言い換えると、基本的な目標や信念を正当化するために、ライフスタイルを維持するために、人は出来事をはっきりくっきりと思い出すのだということです。) pp73-74

 

ディスカッションでは、他派心理学の投影法との比較などについて話題が及んだ。

投影法とはいろいろあるが、インクのシミの絵をクライエントに見てもらって、その連想するところを語ってもらうことによって、パーソナリティーを分析する、というロールシャッハ法が有名だと、その領域に詳しい方が教えてくださった。

 

アドラー心理学のライフスタイル分析は、インクのシミの絵のように分析者があらかじめ用意したものではなく、クライエントの早期回想を使うことが多い。

(特殊診断質問を使う方法もあるが、早期回想を使うことが多いと思う。)

…ちなみにアドラーは、ライフスタイルのことを、「人生の運動の線」「人生目標とそれに向かう方法」などと述べた。(野田俊作顕彰財団Adler Institute Japanホームページより)

 

早期回想は、その人が持つ物語なので、その人独自の「人生の運動の線」や「人生目標とそれに向かう方法」をつかみやすいと思う。

 

早期回想を語っているうちに、早期回想が語り直され、変化してくることがよくある。

わたし自身、体験したことがある。

ある早期回想で、語り始めは「わたしはひとりぼっちで無力だ」の物語だったのが、よい聴き手に聴いてもらっているうちに、起こった事実としての出来事は変わりないのに、「わたしが気づいていなかっただけで、わたしには支えてくれる人々が実はそばにいる、わたしはこの場でできることをやってるではないか!」の物語に変化した。

 

こうして、わたしは、自分自身を縛っていた思い込みから自由になることを知った。

早期回想が変わると、その分ライフスタイルも変わる。そして現在の問題の語りも変わる。

おもしろいなと思う。

 

この日は、他にも、医療・保健・福祉・教育などの領域で広がってきている、トラウマインフォームドケア(TIC)の概念について教えてもらったりと、盛りだくさんで、とても勉強になった。

 

そんなこんなで1時間ほど、途切れることなくにぎやかに勉強した。

 

アドラー心理学のめざすところは、幸せになることだが、それは、わたしだけ幸せになることではなく、みんなと共に幸せになる、ということだ。

「みんな」とは、目の前のあなたであり、周囲の人々であり、「その人自身の人間性の延長線上にある全体としての人類(pp17-18)」のことだ。

 

わたしの場合、時々みんなとワイワイとにぎやかに勉強しながら、そうだったそうだった、と思い出す。

 

この勉強会は、ゆるやかな担当制ということもあって、みんなに居場所と出番があると思う。

楽しすぎて、終わったあと目が冴えて、なかなか寝つけなくなってしまうのが玉にきずだ(笑)