アイデンティティークライシス

月に1回開催されるオンラインの論文読書会に参加している。

いま読んでいるのは、アドラー心理学の基本前提について書かれた論文だ。昨日は、ほんの数行について、1時間ディスカッションした。ものすごく深くておもしろかった。

アドラー心理学は、価値相対論を採用する。つまり、「よい/悪い」という価値観を一旦棚上げにしてモノゴトを見る。
そういうことを、遥か昔の大学の哲学の授業で、「エポケー」というのだと習った。当時のわたしは「エポケーっていいな~、自分の価値観をいったん棚上げにしてモノゴトを見ると、本質がわかるよね~」とわかった気でいた。 ところが、アドラー心理学を学んで、実践して、ちっともわかってなかったことがわかった。
アタマでわかっていてもカラダに落とし込めていないのだ。
つまり、わかっていなかったのだ。
わたしは、自分の常識・価値観(=当たり前)べったりだった。
自分の好みに合うようにモノゴトを見て、自分の好みの方向へとモノゴトを動かしていた。 そんなわたしは、アドラー心理学を学び始めたとき、アイデンティティークライシスに陥った。 自分が信じていた「当たり前」が「当たり前」ではなくなってしまった。その不安定さ、居心地の悪さはハンパなかった。 でも、わたしには必要なことだったと思う。
意識すれば、自分の価値観を棚上げにしてモノゴト見るということができるようになってきた。 目の前の人を「よい/悪い」を超えて理解するために、そして自分自身のことも「よい/悪い」を超えて理解するためにも、「わたしの常識」「わたしの当たり前」という固い信念から一旦離れることは必要だ。
こうして自己理解と相互理解ができたら、ほんとうの意味での貢献とか協力について考え始めることができる。
それまでは、「地獄への道は善意で敷き詰められている」状態だった。

人によってさまざまだと思うが、わたしにとっては、あの不安定で居心地の悪いアイデンティティークライシスが、アドラー心理学の基本前提をカラダに落とし込んで学んでいく上でのはじめの一歩だった、と、昨日の読書会で気づいたのだった。

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お知らせ
9月30日から、流山市で、パセージ金曜連続コース(全8回)がスタートします。
担当は、アドラー子育て大好きな、思春期子育て真っ最中のリーダーさん方です。
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2022年秋のパセージ