AIJ(野田俊作顕彰財団Adler Institute Japan)の、第1回年次大会に参加した。
AIJのホームページに、
笑顔で学び合い、語り合い、所属し合い、勇気づけ合う場が実現したと思います。アドラー心理学をまさに「体験する」ことができました。
と書かれている。
ほんとうに、その通りだった。
野田先生は、1982年にシカゴのアルフレッド・アドラー研究所に留学され、アドラーのお弟子さんのドライカース(1897-1972)の、そのまたお弟子さんのシャルマン先生やモザック先生から生きたアドラー心理学を学ばれた。
そして、その生きたアドラー心理学を、野田先生が日本語に翻訳なさったときから、現在に続く日本のアドラー心理学の歴史が始まったとわたしは理解している。
日本のアドラー心理学の言語は、野田先生の翻訳によって成り立っていると言っても過言ではないと思う。
また。野田先生は、アドラー心理学を学ぶ上での「基本路線」を提唱なさった。
「基本路線」とは、
・アドラー心理学の基礎理論(5つの基本前提)と思想(共同体感覚)を、自己点検や相互点検しながら、日常生活にあてはめて実践していくこと。
・専門家と非専門家がともに学び合うこと。
・自助グループ活動の重視。
だとわたしは理解している。
AIJ年次大会は、その「基本路線」を大切にして行われたと思う。
子育て中のお母さん、お父さん、
保育士や教師や養護教諭、
カウンセラーや医師や保健師、
福祉関係の方々、
その他さまざまの方々が、
それぞれの持ち場でのアドラー心理学の実践について、テーマにそって振り返り、語り合い、勇気づけ合う場を作り上げた。
会場にいる参加者全員で作り上げた場だった。
そして、参加者全員がこの体験をそれぞれの持ち場に持ち帰り、実践に生かし、研鑽を積んで、来年の年次大会につなぐのだろう。
野田先生は、病に倒れてしまわれる直前まで、アドラー心理学の理論・思想・技法の紹介と、日本の文化に合ったアドラー心理学の教育法の開発と普及、そして、ご専門の精神医学にとどまらず、哲学・思想・宗教・言語学・歴史・人類学など多岐にわたる豊富な知識と経験にもとづいたアドラー心理学の研究を、一貫して続けてこられた。
野田先生が語るアドラー心理学は深遠ですばらしいので、未来をつくる次の世代に手渡したいと願う人々はたくさんいる。わたしもそのひとりだ。
野田先生の多岐にわたる膨大な論文や実績にもとづきアドラー心理学を研究なさる未来の研究者も数多くおられるだろう。
AIJ年次大会は、今後、そのような人々の研究発表の場にもなるのだろう。
いろいろなアドラー心理学があることは、とても豊かでよいことだと思う。
そのアドラー心理学の豊かさのなかに、アドラーからドライカースへ、ドライカースからシャルマンへ、シャルマンから野田へと受け継がれたアドラー心理学もある。
野田先生が遺された有形無形のアドラー心理学に関する膨大な事業が、AIJで保存され、未来に継承されるというかたちになって、ほんとうによかった。
…というのが、AIJ第1回年次大会に参加しての感想だ。
*****
すっかり秋の空となった。
やっと深々と呼吸できるようになった気がする。
そんなさわやかな日々がうれしい。