丸投げでもなく、丸抱えでもなく

父の薬の管理も一緒にやることにした。

 

父は薬の数をしっかり把握していて、1包1錠の無駄なく、薬ごとに、「○○の薬は7日分で何包。△△の薬は14日分で何錠、◇◇の薬はあまり飲まんやったので何日分で何錠」などと言い、先生に処方箋を書いてもらう。

薬局でも、薬剤師さんが揃えてくださった薬を念入りに数えてチェックする。種類や数が間違っていると「〇〇の数が違う」などとツッコミを入れて、電話で先生に確認してもらっていた。

入院前までお世話になっていた近所のかかりつけの病院の先生は、あうんの呼吸で「はいはい」と、父の言う通りに処方箋を書いてくださっていた。薬剤師さんも馴れたものであった。

 

退院後に訪問診療となり、H先生が新しく父の主治医となった。

H先生は、父が挨拶のあといきなり薬の話を始めることに、最初ちょっと戸惑った様子だったが、わたしが「父はお薬の管理が命なんです。」と申し上げたら、「それはよいことですね。」とおっしゃってくださった。

そして、父に合わせてくださって、やさしく父の病状の話を聞いてくださって、父の言う通りの薬を、父の言う通りの数で、処方箋を書いてくださった。

…一昨日も書いてくださったはずだった。

 

翌日の昨日の午前中、わたしはH先生が書いてくださった処方箋を持って薬局へ行った。

近所のこれまでの薬局だと置いてない薬があるので、その薬が置いてある少し遠いE薬局を紹介してもらって、取りに行った。

ここまでは、よかった。

 

ところが昨日の夕方、父からメールがきて、「今日の薬のなかに、△△の薬がないので、訪問診療所に電話した。家族が取りに行く日時に合わせて診療所がE薬局に手配してくれます。いつだったら薬を取りにいけるか知らせてください。」とあった。

その時わたしは用事で外出中だったが、明日から連休に入るので薬局や診療所がイレギュラーな営業になるかもしれないと思って、急いで「あさって24日(土)の午前中か、週明け26日(月)の午後4時半くらいのどちらかに取りに行きます。診療所に伝えてください。」と父にメールで返事をした。

 

父が電話してくれて、助かるなあと、ここまでも、無事に事が進んでよかった。

 

ところが、父はわたしのメールをよく読まなかったのか、父から、「訪問診療所には、24日(土)か26日(月)の午前中に行きますと伝えておきました。」と返事がきたので、「26日(月)は、午後4時半くらいでないと、午前中は行けません…」と送ると、「間違えて、面倒なことだけど頼みます」という返事がきた。

頼まれたわたしは、この件を引き取って、訪問診療所と薬局に電話して、問題なく解決できたのだが、父は気にしていて、「注意が足りずにすみません」というメールがきた。

 

家に帰って、父に「何はともあれ助かったよ。ところで、△△のお薬なんだけど、昨日お父さんは先生に頼んだの?」と聞くと、「覚えてない。」と言う。父は「成分は同じでも名前が変わった薬もあるし、飲み方が1錠が2錠になったのもあるし、ほんとうに面倒だ。」としょんぼり言う。

病院と薬局が変わって、お薬管理の「上書き保存」に、父は苦しんでいるんだろうなと思った。

 

先日の、仲間たちによるエピソード分析のおかげで、父の苦しみを受け取れるようになったと思う。ありがとうございます。

 

この日わたしは夜寝ながら考えた。

今までのように薬の管理を父にすべて任せておくのは、父にとって手に余るようだ。かといって、わたしが薬の管理をすべて引き取るのは、父の生きがいと貢献感を奪うことになる。どうしたら良いのだろうか???

 

朝起きて、ひらめいた。

元気なころの父だったら、きっとパソコンに向かって、お薬のチェックリストを作るだろうと。

今の父は、パソコンももうやらなくなっているので、わたしが父に聞きながら作ろう。

こう考えてこうしたいと思っているのは「わたし」なので、父にお伺いをたてる必要がある。

さっそく、父に、「今回の反省点として、お薬についてわたしも分かっておくほうが間違いがないと思ったので、チェックリストを作りたいのだけど、一緒に作ってもらえますか?」と聞きにいくと、父は「よかろう」と言う。

父と薬を確認しながら、まずは手書きで、父が言うように「血圧の薬」「便秘の薬」「睡眠薬」「痛み止め」「塗り薬」などとカテゴリーを分け、今の薬の名前と成分、「1日3回、朝・昼・夜 1包」などの飲み方、名前が変わった薬は[注]として前の薬の名前を書いたチェックリストを作った。その後、パソコンで清書した。

 

でき上がったチェックリストを見て、父は「先生が来る前に、要る薬は丸で囲んで、横に数を書きこんでおいて、これをH先生に見せることにする。」と言う。

それは素敵ですね。

これまで通り、父は自分で管理できるので、たいへん満足していた。

わたしも、これからは薬の管理を父と共有できるので嬉しい。

このチェックリスト、H先生には「何だこれ?」と思われるかもしれないが、つき合っていただこう笑。

 

「丸投げでもなく、丸抱えでもなく」ということ、先日のパセージフォロー会でおさらいしたところだ。

わたしはエピソード分析もパセージも、一生必要だとつくづく思う。