父の訪問歯科の治療は、いったん終わった。
結局、96歳という年齢と身体の状態を考えて、積極的な治療をしないことを父と一緒に選んだ。
父の歯は、3ヶ所に問題があった。
1ヶ所目は歯茎が腫れて痛みが出ていて、
2ヶ所目は歯が半分欠けていて、
3ヶ所目は歯がなくなっていた(根は残っている)。
3ヶ所目の治療について、歯科医の先生は、差し歯と部分入れ歯の、メリットとデメリットを説明してくださった。
差し歯は、ふつうの歯のように使用できるが、歯型をとって、土台を立てて、歯を被せて、調整をする…と、回数がかかるし、今の父にとって治療時の負担が大きい。
部分入れ歯は、差し歯に比べて回数はかからず、治療時の父の負担は少ないが、入れ歯の装着(ワイヤーを隣の歯に引っかける)や手入れが負担になるかもしれない。
先生としては、どちらかというと、父の状態から入れ歯がよいのではとのご意見だった。
お話を聞いて、どちらも標準的な治療だと思ったが、父の話では、「この歯はコロナの前に○○歯科で、差し歯の治療を自分からやめた歯」とのことで、父としては「無いままで特に問題なし」だそうだ。
ならば、このままで良いのではないかと、わたしは思った。
そして、部分入れ歯は、補聴器の二の舞になるとも考えた。
父は補聴器を、手先がうまく使えず自分で装着できなくなってしまった。わたしが装着しても、「聞こえん。」「落とす。」「耳が痛くなる。」などと言うw。。補聴器の会社の方に何度か調整に来ていただきもしたが、父は装着自体を嫌がるようになった。。結局のところ周りが大声で話すことで、父としては補聴器なしで問題なく過ごしているw
わたしは、歯科医の先生に、補聴器の話をして、
「入れ歯ではなく、このままで行くのはどうでしょう?」と聞いてみた。
先生は「それも良いと思います。」とおっしゃった。
わたし「もう96歳と高齢ですし、痛みがなくて、おいしく食べられれば、もうそれで良いのではないかと思います。」と言うと、
先生「そうですね。私も、お父さまにとって、このままで行くのが、むしろベストと思います。」とおっしゃった。
で、先生は、2ヶ所目の半分欠けている歯についても、「今日はここを補強しておきます。いずれこの部分も欠けてしまうかもしれませんが、レントゲンで見たところ根は大丈夫ですし、欠けて不具合が出たら、その時また考えましょう。」とおっしゃって、セメントのようなお薬で補強してくださった。
手鏡で確認し、父は「歯が長くなっとりますな。これでええです。」と喜んでいた。
父はやわらかな物しか食べていないので、これで当分持つのではと思った。
1ヶ所目の歯茎の腫れのほうは、いちおう落ち着いているので、1ヶ月後に歯科衛生士さんが経過を見にきてくださることになり、それ以降は、痛みなど何か不具合があれば先生を呼べば来てくださる、ということになった。
3回の訪問で、なんだかあっけなく治療が終わったが、父の場合は、これでよかったのだろうと思う。
先生と治療の方向性が一致でき、父も満足しているので、これでよかったのだろう。